和食には欠かせないお醬油ですが、実は塩分濃度が海水の5倍あります。不思議と海水の方がしょっぱく感じますが、お醬油はコクとうま味と香りなど様々な要素が複雑に溶け込んでいるからしょっぱく感じにくいと言われています。そして、お醬油には「鮮度」があることを知っていましたか?実は開栓して1か月で劣化してしまうのです。今回はお醬油について徹底解説致します!
そもそもお醬油って何からできているの?
お醬油の原料は大豆、小麦、塩そして、麹菌です。大豆はうま味成分のアミノ酸に、小麦は甘みや香りの素となるブドウ糖に分解されます。塩は雑菌から大豆や小麦を守り、長い期間ゆっくりと醸造するのには欠かせない原料です。そして、なんといっても主役は麴菌です。味噌やお漬物、日本酒を造る際にも麴菌が使われています。ニホンコウジカビと言われ、日本の「国菌」に指定されています。
大豆
お醬油に使われる大豆は『丸大豆』と『脱脂加工大豆』の2種類があります。皆さんのご家庭に常備してるお醬油の原材料名をご覧いただくと、どちらの大豆表記になっているでしょうか。スーパーなどに流通しているお醬油の約8割は『脱脂加工大豆』です。なぜかというと、お醬油を醸造する時に滲出する大豆油は不必要な為、廃棄しているのです。脱脂加工大豆は大豆の油分を抽出し、たんぱく質だけをフレーク状にしたものなので、水分を吸いやすく分解しやすく、何より低コスト。では、『丸大豆』を選ぶ代々受け継がれている老舗の醸造蔵の職人さん。その理由は、大豆の油分が諸味の上部にたまって空気との間に「膜」の役割を作ります。その「膜」がお醬油の酸化を遅くし風味を損なわない大切な役目があり、長期熟成過程で油がお醤油の中に溶け込み、まろやかな風味と深いコクを生み出すそうです。また、丸大豆を栽培している生産者の方、どこで育った大豆なのかが分かるため安心安全に繋がるそうです。
小麦
小麦の成分は、主に小麦でんぷん、食物繊維、たんぱく質です。お醬油を醸造する過程で、小麦でんぷんと麹菌が混ざり合うことで、甘みと香りの素の「ブドウ糖」へと分解されます。小麦でんぷんといえば、「グルテン」です。近年では小麦アレルギーやグルテンフリーを心掛けている人が増えてきています。昔からある「たまり醬油」は小麦を使わず大豆と塩だけで醸造し2年熟成させたお醬油です。(小麦を使用しているものもあるので購入の際には注意)他にも、たんぱく質が豊富なそら豆を使った「そら豆醬油」という製品が誕生しています。
塩
お醬油と海水では塩分は5倍違います。100gあたり海水が3.5%に比べお醬油は16%の塩分が含まれています。なぜ、お醬油の塩分濃度が高いのか。それは、冷蔵庫のような保存技術がない時代に食べ物を塩漬けにすることで長期保存していました。お醬油は醸造期間が半年~数年以上です。この期間お醬油を雑菌から守る役割を担っているのが「塩」なのです。
白醬油 | 薄口醬油 | 濃口醬油 | 再仕込醬油 | たまり醬油 | |
うま味成分 | 0.4-0.6 | 1.15-1.2 | 1.5-1.6 | 1.6-2.5 | 1.6-3.0 |
塩分濃度 | 17-18% | 18-19% | 16-17% | 14-17% | 14-17% |
塩分濃度が高いお醬油ですが、お醬油50mlの中に塩8gとイメージしてもらうと、日頃のお食事の時の参考になるかと思います。塩分排出を助けてくれる食材は、海藻類、イモ類、野菜類です。体に必要な塩分は吸収して、不要な塩分は排出する。和食は塩分濃度が高いとイメージしますが、食材を上手に摂取すれば、不要な塩分は体外へ排出されます。
麹菌
お醬油を醸造する時の主役はこの麹菌です。麹づくりは3日間かけて行われています。蒸した大豆と炒った小麦に種麹を付けて繁殖させ「酵素」を生み出してもらいます。この酵素の力で大豆をアミノ酸へ、小麦をブドウ糖へと分解することができるのです。

お醬油は濃口、薄口だけ?基本の5種類はこれ!
普段お料理に使っているお醬油は濃口醬油、薄口醬油が基本的に常備してあるご家庭が多いと思います。お料理によって使い分けてもらうと一層おいしく変化するかもしれません。基本の5種類をご紹介します。
白醬油
主原料は小麦の割合が多いお醬油です。短期間醸造で薄口醬油より淡い色をしています。愛知県が主産地です。白だしは合わせ出汁に白醬油などを加えて製造されています。
薄口醬油
西日本が主流で使われています。仕込み期間は濃口醬油より短めです。塩分濃度は高めですが、お出汁に少量くわえるだけで素材を活かしたおいしいお吸い物や煮物ができます。
濃口醬油
基本の一般的なお醬油で、全国の出荷量の8割は濃口醬油です。新鮮なお醬油は赤褐色をしていて香りもよいです。熟成期間は3か月~2年。
再仕込醬油
再仕込醬油は熟成期間が長く濃厚なお醬油です。山陰、九州地方が主産地です。食塩水の代わりに生醤油を加えて再度醸造。「甘露煮醤油」とも言われ、色・味・香りが濃厚でトロミがあるのでお刺身、お寿司の他にとんかつソースの代わりに使っていただけます。
溜醬油
中部地方が主産地です。「豆みそ」を作る過程でにじみ出た液体が溜醬油のはじまりと言われています。白醬油の反対で大豆の割合が多く、仕込塩水は少なめ。長期熟成でうま味が凝縮されたお醬油です。
お醬油は鮮度が命。正しい保存方法とは?
開栓前は冷暗所で保存開栓後は冷蔵庫で保存
お醬油は酸素に弱い食品です。酸素に触れることでお醬油の酸化がはじまります。酸化の進行を抑える事が大切です。
お醬油は光と熱と空気が苦手です。開栓前のお醬油は冷暗所で保存すると酸化がゆっくりに。開栓後は酸素に触れるので酸化がすすむのが早いです。開栓後は冷蔵庫で保存し、小出しにすることをおすすめします。
1か月で使い切れる内容量を購入
お醬油を購入して数か月が経っても使い切れていない方が多い傾向にあります。新鮮なお醬油は透明感のある赤褐色です。1か月が経つとくすんだ茶色から黒色へと変化し、味にえぐみがでてきます。ご家庭で1か月で使い切れる量のお醬油を購入されることをおすすめします。
お醬油の賞味期限
ガラス瓶とペットボトルを比較してみると、ペットボトルは酸素透過性があるため、短めに設定されています。また、お醬油の種類によっても異なります。賞味期限はおいしく味わえる期間なので煮物などの熱を加えるお料理に使用することをおすすめします。
濃口 再仕込 溜 | 薄口 | 白 | |
ペットボトル | 18か月 | 12か月 | 商品なし |
ガラス瓶 | 24か月 | 18か月 | 8か月 |
缶 | 24か月 | 18か月 | 8か月 |
密封ボトルで新鮮なお醬油
スーパーなどで見かける密封ボトルのお醬油。お醬油を注いだ時にできる容器内の隙間に空気がはいるのを防ぐ仕組みになっています。私も密封ボトルのお醬油を使っています。使い終わるまでずっと赤褐色でおいしいお醬油です。容量のラインナップがあるのでおすすめです。

まとめ
今回はお醬油の原料と保存方法についてご紹介しました。いかがだったでしょうか。おいしいお醬油を使い分けて食材の味をぜひお楽しみください。
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